暗号通貨高騰と 供給不足が原因
いつまでたっても高い グラフィックボード。市場は完全に機能不全に陥っています。今回はなんでこんな事態になっているのかという話です。
GPU価格の上昇をまとめると以下のような複数の要因に分かれています
①:マイニング需要と転売業者の問題
グラフィックボードが高くても誰も買わなければ値段は下がるわけです、高いというのは誰かが買っているからです。Youtuber?いえ、暗号通貨を採掘するマイナーたちです。
暗号通貨マイナーや 高値で買う人に売りつける転売勢が 高値で買い占めていたら 正規価格で待っている一般ユーザーには回ってきません。
では なぜマイナーたちは価格が高騰したグラフィックボードを買い続けるのか、それは暗号通貨の値上がりが後押ししているからに他なりません。
大規模なマイニング業者はこんな感じで おびただしい量のGPUを使って採掘をしています。
暗号通貨イーサリアムの大幅な価格上昇は2020年の12月下旬からスタートし 2021年5月12日に年内の高値を迎えています、GPUの価格上昇もイーサリアムの価格上昇とほぼ連動しています。
暗号通貨価格が上昇すれば、採掘用のGPU需要が増加するので、転売屋がマイニング業者に転売する目的で価格を押し上げます。
しかし暗号通貨の高騰が終わり、下落が始まれば、市場から消えていたハイエンドGPUが中古市場に逆流してくる可能性があります。そうなれば 今後のGPU価格の押し下げや新製品の販売低下に繋がるでしょう。
個人で採掘している人の例。物置のような建物で GPUを16台動かしてイーサリアムを採掘。1時間あたりの消費電力量は約6000キロワット。毎月の電気代が600ドル付近。イーサリアム収益は高値の今の状況で1ヶ月あたり3000ドルから4000ドルあたりとの事。
②AIBが値上げを行った
次にカードメーカー(AIB)自身が、自社製品の価格を上げた、もしくは高価格を維持した問題です。
基本的には、NvidiaとAMDが特定のGPUの参考価格(MSRP)を設定します、例えばRTX 3070ですと、希望小売価格は500ドルです。
しかし実際にグラフィックカードを作るメーカーはパートナーバージョンとしてのGPU定価を独自に設定します。あるメーカーでは780ドルになっています。
現在は需要が非常に高い状態が続いているため、AIBは利益が 卸業者以下に流れてしまうことを嫌って、数回 希望小売価格を引き上げています。
現在、新しく発生している問題は、AIBが販売する価格が既に 一般消費者が求める水準よりも高いため、小売店が実際に売れるかどうか 判断に迷う段階に達しているという事です。
小売業者が非常に高い価格でカードを仕入れても、それが売れずに価格が下がってしまう、あるいは売れないと、その分は小売業者にとって損になります。そういうわけで商品が店頭に並びにくくなる状態になっています。
③卸業者が小売店にセット売りした
2つ目の問題は、卸業者と小売店レベルでの問題です。小売店は卸業者からもグラフィックボードを仕入れるわけですが、小売店が卸業者からボードを購入しようとした場合、卸業者によっては 回転率の悪い 他のパーツをセットで購入した場合にのみ小売店にボードを販売する事があります。
例えば、ある小売店の話では 新しいグラフィックボードを1枚仕入れるために、AMD A520マザーボードをセットで購入しなければならなかったそうです。
もし、そのセット売りされたマザーボードを店頭で売却できなければ、小売店の損になるため、潜在的な損失を相殺するために、グラボの価格を上げることで相殺せざるを得なくなります。
卸業者にとっては 不要な在庫を小売店に流して現金化し、小売店に負担をかける手法です。小売業者も大変です。
④:サプライチェーンの問題
これは今まで触れてきたサプライチェーンの問題です。現在はGPUだけでなく 様々な製品のチップが不足しています。
AMDにチップを供給しているTSMCや Nvidiaに供給しているサムスン電子は他の製品用のチップの製造にも追われているため、現在以上に供給量を増やすことができません。
それに加えて、グラフィックボードの製造プロセスに必要な原材料、基板、GDDRメモリーの供給の問題が続いています。
グラフィックボードは、CPUなどに比べて部品点数が多いため、部品供給の問題も発生しやすいです。カードメーカーによると、部品の供給は徐々に改善しているものの、まだ必要な量を満たす水準には達しておらず、運賃や地域によっては関税の増加など、物流の問題も加わっています。
⑤:コロナウィルスの蔓延と巣ごもり需要
1月の内容と重複しています。ワクチン接種率は2021/5/18段階で全体の1.2%です、こちらも全体に行き渡るまで2年程度かかりそうです。
まだ買えるような水準ではない
年末まで積み立てるんだ。
北米ではNvidiaのGPU RTX30シリーズは希望小売価格の2.1~3.5倍と高騰しています、AMD Radeonシリーズは1.8倍から2.5倍です。
AMD GPUの方が供給は ゆっくりと改善しているそうなので、今の見通しではNvidiaよりもAMDのGPUの方が価格が沈静化するのが早そうです。
少なくとも今は ハイエンド製品は買えたものではありません。暗号通貨が暴落し、マイナーたちがグラボを中古で投げ売りするのを待ったほうが懸命です。
仕事で使う場合はともかく、ゲーム用途の場合は ローエンドでお茶を濁して、年末まで待ちましょう。