米中貿易戦争の中でトランプ大統領の標的にされているファーウェイ。政治的な話は脇においといて技術的に見ていきたいと思います。
この記事が書かれたのは5月23日。ファーウェイへの制裁はアメリカ企業や日本企業へのダメージが大きいので、いずれ解除されると思いましたが、予想通りでした。 ファーウェイとの取引容認 トランプ氏表明 2019/7/1 |
そもそも 端末がセキュリティ的に安全かどうか。
安全です。怪しい部品は入っていません。
実際にプロの方が最新モデルのMate 20 Proを分解されていますが、ファーウェイの会社HiSiliconのチップだけではなく、日米欧の最先端チップが何個も使われています。
これが怪しいとなると 部品の供給メーカーが怪しいことになってしまいます。そんなわけないでしょ。
フジテレビが与党関係者の発言としてハードウェアに「余計なもの」が見つかったと報じていましたが、一体誰なんですかね。
もし怪しい通信なんぞが行われているとしたら、それはパケットダンプ(ネットワーク上のパケットを見ること)で簡単にバレてしまうので、そんな事はできるはずがないです。
それにHuaweiくらい大きな会社になるとライバル会社が不備を突こうと狙ってますし、ちゃんと調べる有志の人たちもたくさん居るので 不審な点があればxdaなどのサイトにまず情報が上がります。でも上がってません。
怪しい部品が入っていたら炎上している
もし情報を漏えいさせる部品が入っていれば、産業アナリストが喜んでリークして たちまち話題になり、週刊誌が速攻で書き上げて、端末は致命的に売れなくなってしまいます。それではあっという間に倒産です。
しかし何億人も使っていますが、「個人情報が漏れました」みたいな報告は一切ありません。
万が一 個人情報が誰かに見られているとすれば、このご時世 ツイッターで拡散され 事実ならパニック。しかし そんな事も起こっていません。情報漏えいのリスクは限りなく低いです。
じゃあ なぜファーウェイが攻撃されたの?
・ファーウェイの躍進はアップルにとって邪魔
・ファーウェイの収益力を鈍化させたい
・基地局のシェアをとらせたくない
米商務省の役人か米トランプが語らない限り 真の狙いは分かりません。
一つはファーウェイが情報通信産業という点と、アメリカにとって足を引っ張っておいた方が戦略的に得だったからなんじゃないかと思っています。
不調のアップルと躍進するファーウェイ
アメリカの時価総額2位のアップルは、アイフォンの売上が60%です。アイフォンが売れないと困ります。
ところがiphoneの売上は昨年より2割落ちたので、価格を上げて 売上高を維持する戦略を取りました。しかしこれは大失敗しました。
一方低価格で高品質な中華のスマホは躍進しています。ファーウェイのスマホの出荷台数はアップルを抜いて世界2位に浮上しました。
その結果 ファーウェイはアップルよりも多い研究開発費を払って 新製品を開発し投入しています。今期は3眼カメラを発売しますが、ハイエンド製品は世界最高レベルになりました。
実際のところ昨年の特許の申請数も世界一です。ファーウェイは世界中の最先端の部品を使って製品に取り込み、アップルより先に出します。しかも遥かに安い。それは人気も出ます。
5Gへ向けての戦略
アメリカにとっては困ります。高品質なファーウェイが流行ってしまうとアイフォンが売れなくなるし、これ以上 先を行かれては古いくせに高いという最悪の端末になって ますます売れなくなります。
さらにファーウェイに通信用の基地局も独占されてしまっては、仮に敵対した時に通信を遮断されてしまう恐れがあります。
それをストップさせるために収入を減らして、開発力を鈍化させようという事のようです。
結局 急成長するファーウェイが脅威だったという話で、端末も幹部逮捕もただの言いがかりで 製品には何の問題もないというのが結論です。
米グーグルがファーウェイとの一部ビジネス停止、それは自国に跳ね返る
トランプ大統領は5月15日、安全保障リスクのある外国製品の、国内使用を禁止する大統領令に署名、
これを受けて19日 米グーグルは、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイへのソフトの提供など一部ビジネスを停止しました。
概要 ・販売済みの端末についてはグーグルプレイを提供する。 |
今後発売されるファーウェイの端末では、最新のアンドロイドOSは使えないそうですが、正直どうでもいいかもしれません。
アンドロイドはオープンソースなので、ファーウェイはアンドロイドにそっくりのOSを出す事ができます。既にOPPOという会社はアンドロイドベースの独自OSです。
ロイター通信によると今後ファーウェイは独自のOSを投入するとのことですが、これはアンドロイドとの互換性のあるOSです。
アンドロイドアプリは使えるとの事なので、プリインストールされていないだけで、グーグルプレイ、Gmail、YouTube、Chromeも使えるようにするはずです。
グーグルプレイを採用しなければグーグルが困る
ファーウェイは世界に2億台を出荷していますが、ドイツやフランス等の欧州では中華性スマホユーザーが多く、ファーウェイ端末のユーザーだけで10%程度もあります。
もしグーグルプレイが使えないとなっても、独自OSが似たようなストアを提供して同じアプリが使えれば何の問題ありません。
しかしグーグルプレイは アプリの売上の30%を手数料等としてもらう仕組みなので、それはグーグルにとって巨額な損失を産みます。売上が下がれば誰かがクビになります。
解雇された人やその家族はトランプにも共和党にも投票しないでしょう。
トランプ氏はファーウェイへの打撃が国内の雇用喪失につながることが分かっていなかったようです、今後発言の撤回や条件の緩和もありそうです。(追記:ありました)
ファーウェイおよびその関連企業への米企業からの輸出を禁ずれば米経済に最大563億ドルのダメージを与え、最大74000人の雇用喪失をもたらすという。もちろんテクノロジー企業の多くは関税にも輸出禁止にも反対しているし、トランプ政権は米国の雇用をその内政の中心的課題にしている。
ファーウェイは2018年に日本の製造業からも6000億円の部品を購入しているし、排除ではなくて 線引をして仲良くやっていくのが結局は世界の製造業の助けにもなると思います。
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