書籍感想「弱くても勝てます」 弱者は必見の図書

名著

「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー (新潮文庫)

「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー (新潮文庫)

グラウンドでの練習は週1日。エラーでも空振りでもかまわない、変な監督のトンデモセオリーと、下手を自覚しながら野球に取り組む選手たちのドキュメンタリー小説

開成高等学校【高校野球2015夏 】


「僕は球を投げるのは得意なんですか撮るのが下手なんです」

ショートの2年はそう言って微笑んだ

苦手なんですねと相槌を打つと

「いや苦手じゃなくて下手なんです 苦手と下手は違うんです。苦手は自分でそう思っているということでヘタは客観的に見てそうだということ。僕の場合は苦手ではないけど下手なんです 」

高校野球と言うと甲子園常連校の野球を想像すると思うんです、強豪の高校の野球は 小学校の頃からシニアチームで活躍していた小学生を集めて専用グラウンドが整った環境で毎日練習している特殊な世界。

開成の野球部は上手い人ではない。毎年東大に200人入るくらいテストや受験に関してはプロだけれど、野球は普通から下手な人が集まる。普通にやったら負ける

打順を変にする

普通は一番に足の速いやつ 2番がバントの小技ができるやつ 3番4番5番に強打者を並べる。一番に出塁させてなんとか点をとるというセオリー。

だけど開成はそうやって1点取っても、その裏の攻撃で10点取られてしまうから、送りバントのように確実性を積み上げていくと結果的に負ける。

10点取られるという前提で一気に15点取る打順を考えないといけない。

1番に強い打球を打てる可能性のある選手、2番に最も打てる強打者を置いて、3番4番5番6番でそこそこ打てる選手を並べる 

8番9番がヒットフォアボールで出塁すると 一番打者が回ってきて、ここの一番打者がものすごく打つやつだから 長打になったりする。

そうすると弱小チームに打たれたとなっていくら強豪校でも慌ててしまう。ショックを受けている所に最強の2番が登場して さらに勢いがつく それにハマると勝機が生まれる。

ポンコツ弱小チームはギャンブルを仕掛けなければ勝つ確率は0%。こうしたギャンブルをしかければ確率は1%かもしれないけれども勝つ見込みが生まれる。

守備はポンコツだけど大丈夫

守備は案外 差が出ない。練習して上手くなってもエラーすることがある。下手でもアウトが取れることもある。

1試合で各ポジションの選手が処理する玉は大体3~8個。そのうち守備練習を一生懸命やって処理できるようになる玉は1つあるかないか。だからあまり練習しても効果が見込めない。じゃあそこに練習時間を割くわけにはいかない

ポジションの決め方

ピッチャー投げ方が安定している

内野手そこそこ投げ方が安定している

外野手それ以外

最も大事なのはピッチャー。ストライクを安定して投げられないとゲームにならないから。
内野手も投げるの下手だったらアウトが取れないから 相手もしんどい。

守備が上手くなる理由

他のチームなら自然に身につくことでも 開成はぜんぶ理屈で教えなきゃいけません

たまをとるのには二つの局面があります一つはたまを追いかける、そして今度はたまを取る局面

玉を取る曲面の動作はいつも一定じゃないといけない。機械と同じ。膝を曲げて右投げだったら右足の位置を決めて、次に左足を決めて取る。

変な動きをしてはいけない。大事なのは局面の切り替え。切り換えのポイントを同じにすること

-追いかけながら取らないといけないこともあるけれどそれはどうすんのか

そういう頃は例外として考える。取らなくても良い。基本動作にあった球だけを取る。それ以外はなかったことにする すべては基本動作から。そしてその基本動作は理屈から生まれる。

動作を分解することで分解すると足がもつれるような気がするが、こうすれば球拾いも早くなり次の動作にもすぐ行ける

藤田君の証言が面白い

大事なことは反省しないってことだと思うんです

反省してもしなくても僕たちは下手だからエラーが出るんです。エラーしちゃいけないと思うとかえってエラーする。エラーしてもいい。

エラーしても打てばいいと思うとエラーしない。

と言ってもエラーはしますけどね

監督の言うことも気にしない

気にするとそれを引きずって別の場面で失敗する。

選手のほとんどは監督が言われたことを意識しすぎる

下半身で打てと言われるとか阪神ばっかり気にして上半身がおろそかになる

それじゃ意味がない。

勉強の場合は真面目にやった方が成績は上がる。でも野球の場合は真面目にやろうとするとそれだけ緊張するから不真面目ぐらいでちょうどいい

練習じゃなくて実験する

練習ということは同じことを繰り返して体得するという意味

しかしうちの場合は十分に繰り返す時間もない

体得も待ってられないから それぞれが繰り返すべき何かを持っていないから「練習」じゃだめ.

じゃあどうすればいいか

実験と研究しかない

グラウンドを練習ではなく実験場として考える。

あらかじめ仮説を立ててそれぞれが検証する。

うまくいってもいかなくても結果は出る。それをフィードバックして 次の仮説を立てることに利用する。

このサイクルを利用していくうちにそれぞれがコツをつかんで一回コツがわかればそれを繰り返して体得する。

そこで初めて練習と呼ぶに相応しいことができる

練習と聞くとだるいが実験と検証と言うと一試合に意味が出る 

あとがきで桑田投手も賛同

打撃はダウンスイングでふれ 最短距離でふれと言われるが注意が必要

一番大事なのは最速で振ること。物理学には最速降下曲線というものがあって、最短で行くより弧を描いたサイクロイド曲線で振る方が水平の時にバットスピードが最も早くなる

ピッチャーの中では肩を落とさないように投げるっていうのも一つの定説になってはいるけれどもこれは本当じゃない。

実際 村田兆治投手は肩を一旦落としてから投げている。でも多分本人は下げているとは言わない。

自分の感覚と実際の動きは異なる。そのギャップはちゃんと理解しておかないといけない。結局は科学的 客観的に考えて 事実を分析したほうがいい。

かんそう

野球部と言うと丸坊主、挨拶、それから文武両道、先輩に雑用をさせてはならない、監督の命令は絶対。何と言うか軍国主義のそのまんまを実践させているような超体育会系の集団というイメージ.

これもちゃんと何のためにやっているのかという理由付けが必要。礼節は大事だが、それだけしていれば安心だという時代でもなくなってきた。

上司(監督)が間違っていたら それは間違っているんじゃないかと内心思って実験するような子じゃないと伸びない

野球というのは一体何のためにするのか、ちゃんと指導者も考えないといけない。教える方も勉強しないといけない。監督は選手以上に。

全然考えなくていいのが根性・とにかく練習論だ。

根性、セオリー通りにしか考えられないと 「投げ込みをさせろ、走り込みをさせろ、精神的においこんで一皮むけさせろ」と 「喝 喝」いう人や 藤浪投手に160球投げさせて退陣させられる監督みたいになってしまう。

で、そうやってメンタルを追い込んでも選手は良くならない。

弱くても勝つにはどうしたらいいのか、自分たちに合ったやり方はどういうもんだろうかと考えているところが大事だ。ゲームも一緒。

自分なりに工夫してなにかする。こういうのが一番面白い。科学的に野球を考える所が落合監督に近い。先が見えない時代に生き残るには オレ流&実験・観察が重要。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする