感想:沈みゆくアメリカ覇権~止まらぬ格差拡大と分断が…~

読んだ後の感想を一言でいうと、トランプさんの再選は厳しそう(以下敬称略)

アメリカ大統領選を11月3日に控えており、これまでのトランプ政権がどうだったのかを振り返る意味で読みましたが、当選後のトランプ政権から コロナウィルス感染後のアメリカ国内の動きがよく描写されていて非常に良い本でした。


トランプさんの大きな失敗は大きく分けてふたつ

.中国の経済活動の封鎖を行ったことでアメリカ国内も経済のダメージが大きくなった
.コロナウイルスの封じ込めに失敗してアメリカ国内で20万人以上の死者を出した

現在のアメリカ国民が望んでいること

経済回復とコロナウイルスの終息

トランプ大統領の側近は微妙

トランプ大統領は身の回りにイエスマンもしくは大統領をうまくかわす事ができる人物しか残っていない。大統領に真っ向から反対する人は去るかクビにされてしまうので生き残っていない

ニューヨークヤンキースのスタジアムを見れば分かるけれども観客がほとんど入っていないアメリカは日本の比ではなく40倍くらいコロナが流行っているので経済活動も停滞気味。

それでも株価が下がっていないのはFRBが金融緩和を行っているためで、だぶついたお金が株式市場に流れ込んでいる

上院も負けたら 何もできなくなる
アメリカ上院と下院に分かれていて、下院はすでに民主党の方が多い。上院は共和党(51)

民主党(47)で共和党があと4議席を失ったら民主党が勝ってしまう。もし上院でも民主党が勝ってしまうと トランプが大統領選に勝って閣僚を指名しても通過しなくなるのでトランプは何もできなくなってしまう。

前回票を集めた州は 再びトランプ陣営には付かなそう
フロリダ ミシガン ペンシルバニア ウィスコンシン オハイオは2016年のトランプ勝利に大きく貢献した接戦の州だった。トランプは中国の製品に関税をかけることや中南米からの移民を制限すると言ってこれらの州の労働者票を民主党から奪った。

だけれどこうした地域の失業率はコロナウィルスと中国との関税戦争で悪化した。

コロナは財政支出との戦い

現在は巨額の政府補助金が流し込まれているので、今は失業者も不満の声を上げてはいない。給料よりも補助金の方が多いという人も多い。

二期目の選挙で落選した現職大統領は2人しかいない。

1980年のカーターと1992年のブッシュ(父)大統領。どちらも不況による不満が原因で選ばれなかった。今回は中国との経済摩擦とコロナによる経済停滞のダブルパンチで現職のトランプも苦境に立たされるのは間違いない。

大統領の当選をよく当てる人
二人。アメリカン大学のアラン・リクトマン教授とニューヨーク州立大のヘルムート・ノーポス教授。リクトマンはトランプの落選を予想している。

貿易不均衡問題どころではない

アメリカと中国が貿易の不均衡が問題になってお互いの製品に関税をかけまくる戦争状態に突入したが2020年の1月に話し合いをして一旦落ち着いた

ところが3月にコロナウイルスが流行りはじめアメリカで爆発的に広まったその後自粛ムードとなり経済は大打撃を受けて現在に至っている

元々トランプは中国との正面衝突しようとやってきたわけではなかった。関税をかけることで中国企業を困らせて習近平と有利な交渉をしようとしたのではなかろうかと思われる。

トランプは中国企業にダメージを与えたが、同時にアメリカ国内経済も打撃を受け 中国どころではないのかもしれない。

アメリカファーストとは?

トランプは公約の一つにアメリカファーストと掲げてきた。アメリカの利益が最大になるように動くという意味だがこれの範囲は広い。

トランプ以前のアメリカは中東に軍を派遣していたが、トランプ的には他国の治安維持や体制の転換に自分の軍隊を使うのが割りに合わないという事らしい。

中東の安全維持とか日韓に資金やマンパワーを使いたくないというのがトランプの本音らしい。ミサイル爆撃はするものの軍隊を派遣しての大規模戦闘は行っていない。

爆撃はするけど派兵はしない

2019年10月27日、IS指導者だったアブバクル・バグダディ容疑者を空爆で殺害。2020/1/3イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のカセム・ソレイマニ司令官を空爆で殺害。ISとイランに打撃を与えた。

感想

トランプが中国経済を引っ張ろうとするのはある程度 理解できる。中国政府は17兆円程度を毎年軍事費に回し 香港 台湾 東シナ海欧州で支配領域を広げようとしている。

そして国境を超えて貧しい国に多額の投資を行って中国に逆らえないように体制を構築しようとしているようだ。戦略的に動いている。

そのため 共和党だけではなく民主党も中国を警戒している。

ただトランプはそういう中国の成長を遅らせる戦略というよりは有権者にアピールするために中国を口先攻撃しているようにも見える。

経済の落ち込みは中国と日本のせいだといいながら 裏では 農業従事者の票を集めるために 習近平に小麦を買うように相談していたとリークされていた。

中国への関税にしても 電話会談の後で急に撤回したりで一貫性がない。

本当は生産の軸足を別の国に移させたり 元高に誘導して経済の足を止めてバブルを崩壊させたりといった戦略が必要になるが、もし中国の土地バブルが弾けた場合、それに耐えうるだけの体力がアメリカにあるのかは微妙なところ。

トランプが引き続き大統領になった場合 黒人差別問題 銃規制 保険制度 中国との貿易不均衡はなにひとつ進展せず また無駄に4年が過ぎそうな感じがする。

ではバイデンに替えて何か変わるのか うまくいくのかと言われると これもつらい。

たしかにトランプのような強いリーダーシップは感じない。バイデンの言うことを聞いていても 具体的にどうするのかビジョンは見えない。ただ政治家は何考えているのかよりも行動で評価しないといけないように思う。 

中国への経済制裁をしないならば 東シナ海での活動は活発になり 日本も いよいよ衝突せざるを得なくなるかもしれない。それが嫌でトランプ!といいたい人も少なくないでしょう。

ただトランプは威勢だけはいいのですが、実際には全く戦争をしない人で、今後トランプにまかせておけば中国の動きを牽制していけるのかと言われると 無いでしょう。

行動の流れを見ずに 発言だけに注目してしまうと 実際には働かない人をトップに選んでしまうという結果になりかねません。

https://ig.ft.com/us-election-2020/

最新の州別投票世論調査

2016年にトランプ氏が僅差で勝利したミシガン、ペンシルバニア、ウィスコンシンではバイデン氏が6ポイントのリードを示している。極めて重要な州であるフロリダ州では 接戦。


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