【Netflix】獣の住む家をネタバレありで解説したい。

邦題は「獣の住む家」になっている。普通に「彼の家」で良かったかもしれない。

ここから先はネタバレ有りで解説していきたい。ネットフリックスを初見で見たときはよく分からなかったけれど 時系列に整理するとこうなる。

 

スーダンで内戦が始まって、民間人が虐殺され始めた。主人公のマジャール夫妻(ボルとリアル)は 南スーダンから難民として、イギリスに亡命する事を決意する。

ボルとリアルは避難用のバスに乗ろうとすると、「もう満席で乗れない! あとは子供だけだ!」と言われる。

このまま取り残されても死ぬだけなので、ボルとリアルは その場に居合わせた女の子ニャガクを 自分の娘だと偽って バスに乗り込む。

ところが ニャガクの本当の母親が 出発前にバス近くにやって来る。無情にもバスは発車し、母親は 娘の前で撃ち殺されてしまう。 リアルはニャガクを守ると誓う

ボルたち3人がスーダンからイギリスに向かう途中で船は転覆する。

乗員全員が海に投げ出される中、ボルは なんとかリアルを船に乗せるが、ニャガクや その他の乗員は溺死してしまう。利用するだけして 結果的にニャガクを殺してしまった。

亡命成功….か?

ボルとリアルは一命をとりとめてイギリスに到着した。しかし罪悪感にさいなまれる。

ボルたちは 市民ではなく、条件付きの移民として 貧民街の一角の住居をあてがわれることになった。

「最小限の給付金はやる。仕事はするな、指定の地区から出るな、許可されている以上の賃金は貰うな」など厳しい条件がならんでいた。

家は荒れ果てて虫がうようよしている。政府の管理住宅であることが暗示されている。

ケースワーカーであるマークたちは、キミの家は自分たちの家よりも大きいと 「移民のくせに」感を押し出してくる。

せっかくの新居だったが、ボルは仲間や娘を見殺しにしてきた罪悪感から  魔女に取り憑かれて幻影を見るようになる。

ボルは過去に切り捨ててきた人たちが 目の前に現れて 良心が苦しむ。ニャガクの亡霊に悩まされると、ボルは壁を壊して「ここは俺の家だ!」と叫ぶ。

ボルは自分たちが持ってきたものを焼き払うことで イギリスの生活に順応しようとする、一方で リアルは 貧民街の住民から 「アフリカに帰れ」と非難を受けて凹む。

 

逃げてきたが、どこにも居場所はない。

ボルはスーダンには帰りたくない。リアルは帰りたい 二人の間に隙間が生まれ始める。ボルは家の取っ手を外して リアルを外に出さないように工作する。

リアルは、ケースワーカーが訪問に来た時も 「ここには魔女がいる」と 言わなくていいことを行って イギリスへの強制送還をワンチャン狙いに行く。

リアルは不満が爆発し、家から強引に出る。そこで昔の記憶がよみがえる。夢の中でリアルは死んだはずの村人と再開する。

リアルは夢の世界の中で 魔女に囁かれる。ボルは借りを返さないといけない。ボルの命を差し出せば リアルの願いを叶えてやると言われる。

ボルは罪の意識から 俺は死んでもいいと 半ばあきらめる。やがて魔女が登場してボルを殺そうとするが、リアルは過去を断ち切り 魔女を殺して ボルは助かる。

再びやってきたケースワーカーに 魔女はまだいるのかと冷やかされると、ボルは 「ニャガク?」と答え 「幽霊はどこにも行かない。ずっと一緒にいる。彼らを受け入れた時に、やっと自分と向き合うことができた」と答える。


「彼の家」というのは 日本語でいうと「あいつらの家」という感じで、 区別して言われている感じの表現。もっと露骨に言うと「難民の家」というニュアンスでしょう。

 難民の人の多くは 故郷から離れる時に 何かトラウマを抱えている。そのトラウマを持っている状態で ボルが壁をぶち壊したように 毎日 心の中の悪夢と戦うことになる。

それでいながら、他の国に移民したとしても「奴ら」という感じで扱われる。

おなじアフリカ系の市民にすら 訛りがひどいとバカにされるし 国の職員にも ほぼ厄介者扱いされる。 同化しろとか言われるけれども 市民と同じような権利はない。

最後には 疲れて、申し訳無さで 生きることをあきらめたくもなる。でも この後悔満載でも おれたちは 引きずって 生きていくしかない すまん! という なんとも切ない終わり方。

ホラーと言うか、社会風刺の側面もあって、 なんだか心にズーンと来る内容だった。

 

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