トランプの右腕?ハワード・ラトニックが関税政策で炎上するワケ

ハワード・ラトニックは何物?

SNSでアメリカ人に連日叩かれている ハワード・ラトニック商務長官(63)。この人が トランプ政権で 相互関税政策を決めている人として叩かれている。

​ラトニック氏(以下敬称略)。今は商務長官だが、元々はニューヨークの金融業「キャンター・フィッツジェラルド社」のCEOをしていた。

このキャンター社ってのは 日本で言うところの野村證券とか、大和証券とか大手証券会社みたいなもんで、お客さんの代わりに株を売ったり国債を売買する会社だった。

昔から 超絶お金持ちで ウォール街のドン的なポジションで、トランプ大統領とも40年以上の付き合いがある。

トランプに献金して 信頼を得る。

今回の選挙の時に ラトニックはトランプ陣営のための募金イベントで約1,500万ドル(約22億円強)を集めた。そのうち、ラトニック自身も約500万ドル(約7.5億円強)を直接寄付したという情報がある。

トランプ政権に入れたのはなんで?

 今回のトランプ政権に入る場合、政治的な実績はあまり重視されない。それよりもトランプに対する忠誠心、つまり、トランプが掲げる政治の方向と合うか、トランプに絶対服従するか、またこれまでトランプにどれだけ貢献したか、あとはトランプ自身が その人をどれくらい信用するか、または気にいるかで決まるみたいです。

選ばれた理由1. 長年の付き合い
ラトニックとトランプは40年くらい前からの知り合いで、ラトニックは金融の分野、トランプは不動産で活躍していたので、その時からビジネス上のつきあいもあったし、共通の知人も多かった。

選ばれた理由2. トランプの考えるアメリカ・ファーストと意見が合った。
ラトニックは減税が経済成長をうながして、税収が増えて財政が健全化すると主張していた。トランプもこの考え

ラトニックは輸入品に高い関税をかけ、輸入品の値段を上げて外国への依存を減らし、歳入を増やして、そのお金で国内産業を保護しようと考えた。で、これがトランプの貿易赤字削減とか製造業復活のビジョンと合致した。

そんなわけで「ラトニック やってみないか」となったようだ。

 余談だけど イーロン・マスクはラトニックの6倍くらいの金額(7200万ドル 112億円)をトランプ陣営に寄付したけれども、与えられたポストは微妙だった。だから単純に寄付金の大きさだけで 政権のポストは決まらない。

ラトニック、商務長官としての役割

トランプが選挙に勝った24年の11月19日、トランプは ラトニックを商務長官に指名、25年2月21日に正式に就任させた。トランプはラトニックを「貿易と関税戦略のリーダー」として位置づけました。
 
こうしてラトニックトランプの掲げる「アメリカファースト」の実現にむけて動き出した。商務省トップのラトニックは、関税を含む通商政策を担当します。
 

ラトニックが掲げた目標「超、自分勝手」

  • 高関税で貿易赤字削減するぞ:関税かけて、貿易赤字を減らす。
  • 国内製造業を復興するぞ:関税で輸入を減らし 規制緩和で製造業を強化。
  • 経済安全保障の強化するぞ:半導体を外国にとられるとやばい。国内で生産する。
  • 減税と財政を健全化するぞ:減税で経済成長を促して、関税収入で財政を支える。
他国のことなんかどうでもいいんだ、アメリカさえ良ければいいという目標が完成しました。
 
25年4月2日に発表した「相互関税」は、ラトニックが率いる商務省が中心となってまとめたとされていますが、まぁそうだろうなという感じがします。

商務官としてはダメダメのラトニック。

そもそも ラトニックは、トランプ政権に入る前はただの証券マンで 政治家や官僚としての経験がありません。金融の経験はあっても、政治の経験はゼロです。

そんな政治経験ゼロのラトニックが考えた 最強の関税プランが4月2日に出てきたわけです。

結果どうなったの? 「撤回」の連打
→米国債金利が上がる→ やっぱ相互関税は90日間延期します。

→iphoneの価格が高騰するという報道が広まる→ やっぱりスマホ類は除外します

関税政策は大失敗。 関税の及ぼす結果を予想できず、勢いと情熱だけで関税を決めちゃった事が裏目に出ました。

商務省にもベテラン職員がいるのに どうしてラトニックを止められなかったの?

商務省の職員は もちろん政策の決定に対してラトニックに助言やサポートをするのも仕事の一部ではある、でも 最終的な決定権は長官や大統領にあるから、内部で異論があったとしても、それを止めるのは難しかったようだ。

そもそもラトニックが4月2日に どんなふうに考えて あの関税を出してきたのか、商務省内の情報はリークされないので、詳しくはわかりません。だから何が起きたのかは 推測するしかない。
 
ただ(25年4月10日の)ウォール・ストリート・ジャーナルには、ラトニックの強引な進め方は企業や一部の政権関係者から混乱や反発を引き起こしたと書かれている。つまり満場一致で 出てきたわけではないのは確実。
 

【妄想】 4月2日の関税案はどんなふうに出てきたの

 
ここから先は事実や これまでの過去政権で起きた事を参考に考えた推測です。(事実を元にこれなら筋が通るというもので、違う可能性もあります)
 
商務省の人も4月2日の関税政策がゴミだというのは見た瞬間に分かった可能性が高いです。 でも トランプやラトニックに「こんなのダメに決まってるだろ」と突き返すと クビや左遷になる可能性がある。そのため分かっていても言いにくい。

そしてクビ覚悟で「無理に決まってんだろ」と言ったところで 
ラトニックはトランプの言う事しか聞かないので 無駄に終わってしまう。

なので商務省の人も 分かってて止められなかったんじゃないかなと個人的には思っています。もちろん組織的には問題があるとは思う。
 
 
商務省の人が長官に無視されてきた例
例えば トランプ政権(2017年)の商務長官ウィルバー・ロスは2018年に鉄鋼・アルミニウム関税(25%・10%)を導入する際、商務省内外で慎重論が出たんだけど、反対を押し切って強行した。

バカげた関税を覆せるのは 結局はアメリカ国民の反発

今回も 25年4月7日までではラトニックは強気でした。相互関税の実施を「延期しない」と強く主張していた。日本(24%)やEU(20%)への高関税率も押し通す構えだった。
 
ここまでは商務省内部での議論を押し切れていた可能性が高い。
 
でも 米国債金利が上昇して 「あれ…マズいぞ」ってなって 相互関税の延期が決まり、 「このままではiphoneの値段が高くなる」という国民の不満が政権内に伝わって、それに押される形で電子機器(スマホやノートパソコンなど)を関税対象から除外する措置が取られた。
 
だから国民の後押しを受けて、商務省内部で何かが動いた可能性はある。
 
ただし、ラトニック自身は テレビ番組に出演して これらの除外を「一時的だぞ!」と強がっていて、まだ 半導体を関税の対象に含める方針を表明している(14日)。
 
つまりラトニックの中では まだ外国に高い関税をかけるという姿勢を維持している。
 
まぁもしかしたら 既にラトニックは引くに引けない立場で、商務省の中で 誰も助言できないくらいの孤立状態になっているのかもしれません。
 

なんでそんな強情なの?

いま関税を撤回してしまうと トランプ政権のイメージに傷がつきます。「うまく行ってない」「失敗した」と国民に思われてしまう。だから 撤回ではなく 「延期」と言って誤魔化してるわけです。
ただし現実としては いままで出してきたラトニックの関税アイデアは全て失敗しているし、このまま無理して実現しても アメリカ国内のインフレは避けられない。
 
そもそもトランプさんは「物価を下げるぞ」と掲げて当選したんだから このまま強行すると不満は高まって 政権が崩壊してしまう。
 

これから関税はどうなるの?

これからもラトニックは変な関税案を提出してくる可能性が高いです。商務省も止められないので、そのまま市場に出てきては  国民の反発によって 退けられるというコント展開になる気がします。

えっ、ラトニックが後日発表する予定の半導体の関税ですか?
そんなもん諦めるでしょう。

ラトニックはまるでダメですが、そんなラトニックを商務長官に任命したのはトランプで、 結局はトランプ政権である限り、ラトニックを外しても、似たような奴がそこに座るため、大本の原因が変わらない以上は これから先も経済の混乱は続くんじゃないかというのが個人的な感想です。

余談 ナバロの役割(ナバロは滅多に表出ない)

  • ラトニックといっしょに名前が挙げられている ピーター・ナバロは大統領の上級貿易顧問で、関税政策の「設計者」として知られています。

    4月2日の相互関税は、ナバロが長年主張してきた「保護主義」「対中強硬策」の悲願成就とも言える。

  • ナバロは特に中国への125%関税や、貿易赤字是正のための「関税をかけてアメリカに仕事を作る」って考えを強く推してるので、ラトニックと近い考え方を持っている。

    だからこそイーロン・マスクがEUとの関税はゼロが良いと言った時に「テスラは組み立て屋だ!」とブチ切れたわけです。

    ・影響力の限界
    :ただし、ナバロは商務長官のような実務的な権限は持っていません。関税の具体的な運用(どの品目に何%、いつから)は商務省や財務省(スコット・ベッセント)が主導。

  • ナバロはあくまでも「助言をする立場」「提案者」で、トランプの耳に直接入れる影響力はあるけれど、細かい数字の決定 はラトニックやベッセントに委ねられてる印象(The New York Times、2025年4月8日)。

    実際、90日間の関税一時停止が発表されたときも、ナバロは目立たず、ベッセントやラトニックが説明役でした。

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