前説
2012年、アメリカ制作の映画”Innocence of Muslims”(イノセンス・オブ・ムスリム)が公開になった。 この内容が イスラム教を侮辱するものだとして、9月11日以降、イスラム圏で反発や抗議運動が起きた。特にリビアでの暴動は大きく、イスラム過激派がアメリカ公館を襲撃した。
3行で言うと どういう話?
9月11日リビアのベンガジにあるアメリカ領事館が過激派に襲撃された。アメリカ軍はリビアの内戦には介入しない方針であるため救出が遅れている。
そんな中、 施設の人たちを守るために 民間軍事会社(傭兵)の6人が立て籠もって防衛して、アメリカンのみんなでベンガジから逃げようとする話。
あらすじ
リビアのベンガジは世界で最も危険な場所になった。アメリカ以外の国は 過激派による攻撃を恐れて外交官を撤退させつつあった。
アメリカは大使館をベンガジ市内に置いていたが、そこから1マイルも離れていないところにCIAの前哨基地「アネックス」があった。
アネックスはハーバードやイエール大卒の精鋭が リビアで外交を行うためのオフィスでもあった。軍隊を置いて住民を刺激したくはないため、民間軍事会社「グローバル・レスポンス・スタッフ(GRS)」のチームが警備していた。
ベンガジに到着したジャック・シルバは、GRSチームの指揮官で、友人でもあるタイロン・ウッズの指揮下に入る。
シルバは、他のGRSチームやCIAのチーフに紹介される。CIAチーフは アネックス内で 民間軍事会社の職員がうろうろするのを望んでおらず、市民を刺激しないために なるべく市民と関わらないようにと忠告する。
GRSチームは後日 到着する予定のアメリカ大使の到着に先立ち、大使館を視察に行く。
驚いたことに 大使館は最小限の警備しかなかった。その事を 大使の警備に当たる 外交保安部(DS)のエージェントに警告する。
アメリカ大使到着
クリス・スティーブンス大使は、リビアとの外交関係を維持するためにベンガジに到着した。
大使には 5人のDSエージェントと、現地の民兵 2月17日殉教者旅団(通称「17-Feb」)に雇われた 数人の兵士による保護しか受けられなかった。
9月11日、クリス大使は不審な男たちが屋敷を撮影している事に気づき、警備隊に連絡する。
襲撃
その夜、アンサール・アル・シャリアと名乗る武装集団が大使館を襲撃してくる。17-Febの警備員はすぐに無効化された。暴徒は敷地内に侵入。
DSエージェントの スコットは大使と IT専門家のスミスをセーフルームに逃がす。
セーフルームに侵入できなかった攻撃者たちは、施設ごと焼き尽くそうと建物に火をつける。セーフルームには黒煙が入ってきた。
スコットはGRSチームに救援要請するため その場を離れるが、大使たちと はぐれてしまう。
スコットから連絡を受けた GRSチームはすぐに救援に行こうとするものの、アネックスのチーフはGRSチームが出発することで アネックスが攻撃されることを恐れて 待機しろと言う。
しかし、GRSチームは命令を無視して屋敷に突入。 DSエージェントたちと合流する。
シルバとウッズは 大使とスミスを探しに建物の中に入るが、 スミスの遺体だけが見つかる。
大使が見つからないものの、施設内では武装勢力との激しい銃撃戦が始まってしまった。DSチームは先に撤退するしかなかった。
脱出の途中 スコットが道を間違えたため、アネックス基地に戻る途中で武装勢力に追われてしまう。その後、GRSチームも基地に退避する。
アネックス襲撃
大使館の襲撃が終わり、過激派の攻撃がアネックスに迫っていることを知った CIAスタッフは、近隣諸国に救援を求めるが、応答したのは 400マイル離れた リビアの首都トリポリのGRS将校グレン・ドハーティだけだった。
将校グレンは 民間自家用機のパイロット2名を含むチームを結成し、救出のためベンガジに飛んだ。
救援を待つあいだ、GRSチームは、別基地の防衛ラインを突破しようとする武装勢力との耐久戦に突入する。GRSチームは屋上で救援からの連絡を待つが、なかなか来なかった。
防衛の途中で無線連絡が入る。大使は施設付近で発見された。病院に運ばれたが、窒息死だったと分かる。
午前5時、トリポリのGRS部隊から もうすぐアネックスに到着すると 無線で連絡が入り、トリポリの部隊がアネックス基地に到着する。
アネックスにある機密情報は全て焼却し、全員でトリポリの空港に脱出する事になった。
耐久戦の最後
ところが基地のスタップが多すぎるので 乗ってきた車両だけでは足りない。
グレンたちは さらに移動手段を用意するためにその場を離れ、GRS部隊は もう少しだけ耐久してくれと言われる。
そこへ武装勢力が迫撃砲を放ち、屋上の守備隊DSのウッベンとGRSのガイストが負傷。ガイストの左腕を負傷してしまう。
ウッズはガイストを助けようと駆けつけたが、迫撃砲を受けて死亡する。ドハーティも3発目の迫撃砲が炸裂して死亡した。
アネックスを守っていたGRSチームは危険にさらされ、基地は無防備な状態になる。そこに見慣れない車列が基地に向かって走ってくるのを見る。
最後を覚悟した隊員たちだったが、その車列はGRSを護衛するリビアの組織「シールド・フォース」のものだった。味方だった。
帰国
空港では、CIAスタッフと負傷したガイストが トリポリ行きの飛行機に乗り込み、GRSの残りのチームは大使、スミス、ウッズ、ドハーティの遺体を抱えて次の飛行機を待つことになる。
エンディングタイトルでは、生き残ったGRSメンバー全員が、式典でコントラクターメダルを受け取り、その後GRSチームを引退して家族と暮らしていること、ガイストが手術を受け 回復した映像が流れる。
解説:良く出来たアクション映画
2001年のアラブの春で誕生した国は政情不安定により治安は最悪で、過激派の不満が爆発しやすい状況ではありました。
大使が殺されたのはリビアだけ でしたが、イスラム圏の人たちが怒ったのは リビアだけではなく、抗議活動は イラク、ヨルダン、クウェートなど様々に及んでいました。
ヒラリー・クリントン国務長官(当時)や オバマ大統領についての言及はなく、政治的な要素は削除され、アクション映画として作られています。
現代の傭兵がよく分かる
今回の主役GRS(グローバルレスポンススタッフ)は CIAと契約している警備兵。傭兵VS過激派という珍しい戦いになっています。ゲームで言うと メタルギアソリッド5の兵士達が要人を警護して 脱出劇を繰り広げるといった感じです。
漫画でいうとヨルムンガンド、マージナル・オペレーションの世界。
主人公たちは武装警備員であって、軍人ではありません。軍人と間違えられると現地の人に撃たれたりするので、間違えられないように 彼らは迷彩服を着ません。Tシャツなどのカジュアルな服装の上に 防弾ベストなどを着用するのが特長です。ヘルメットもしてないのはやりすぎ(笑)
傭兵とはいえ、武器は最新式です、映画では暗視ゴーグルに赤外線レーザーポインター、マシンガンM240にM249。アサルトライフル HK416と本格的です。
対して過激派はAK-47にロケット砲RPG-7、迫撃砲と旧共産圏の武器です。
映画の主題は 浅いもので、監督がマイケル・ベイなので、アメリカ万歳ヒロイズムを強調するために、リビアの兵士がなぜ怒っていたのかという根本原因には踏み込んでいません。
命を懸けて職務を行った男たちの物語を強調しないといけないはずですが、彼らを突き動かしている 思想の根源に迫るものでもありません
銃撃シーンは良く出来ていていますが、赤ちゃんや家族との遠距離通話が記号として使われているため、薄っぺらく感じます。感情面の推移描写は一面的で アクション映画として見るほうが面白い作品です。