夏に向けて今期もダイヤのA、MIXという大作があるなかで「八月のシンデレラナイン」というあまり注目を集めていない作品がある。
ゆるキャン△の人がシリーズ構成してるし、やっぱり面白い。
一見 ”美少女+公式野球”という ゆるい萌アニメかと思っていたけど、実はそうじゃなかった。見た人もいるかも知れないけれど、1話のタイトルが深い。
プレイボールである。
なんだそりゃと思うかもしれないが、その下にこう書いてある。
Its supposed to be fun,The man says ‘Play ball’ not ‘work ball’ you know.
「楽しくないといけないはずなんです。(プレイボールは)ボールで遊べと言ってるんです。ボールで仕事しろとは言ってないでしょ?」
これは70年台に活躍した メジャーリーガー、ウィリー・スタージェルの言葉。パイレーツ一筋20年の左の強打者で、400本のHRを打つなどチームリーダーとして貢献。誰よりもファンに愛された精神的な柱でした。ついたあだ名が「パパ」。61歳でこの世を去ったウィリーが残した言葉なのです。
笑顔がなければ野球じゃない
いきなり話は脱線するが、現実のプロ野球は、成績が悪くなったら降格、それで調子が戻らなかったら最悪で解雇という厳しい世界。こんな世界では とても楽しむどころではありません、だからみんな仏頂面で野球をやっています。プレイしてません。
しかし古い映像を振り返ってみていると 長嶋さんの世代くらいまでは 思いっきり空振りして苦笑いしていたり ホームランを打った後ニッコニコでベンチに帰ってくる場面も多いのです。
いくら勝負の世界とは言え、現在のプロ野球選手はどこかで余裕を失っているように見えるのは自分だけではないでしょう。
高校野球にしても同じで 強豪校でのびのびとやっている所は少ない。それどころか甲子園に出場するために、大阪や東京のような大都市から 有力な選手をそれぞれの県が輸入して 少しでも有利になろうというのを当たり前のようにやってたりします。
だからサイン盗みなんてする訳です。FPSでいうとチートです。多かれ少なかれ 楽しんで野球をやれている環境は少ないでしょう。
現実の野球部は 謎の集団行動だからビシッとした縦社会だし、プレーがうまくいかないと監督や友達 先輩にキツく責められて せっかく頑張ってきた野球をあきらめてしまう人も多いわけです。
本作にもうまくやらにゃいかんとか 俺は周りに比べて下手だからやらないほうが良いと、
そういった自分を責める子が数多く登場します。
だけど このアニメは ある意味 そんな野球じゃなくてもいいだろ。と投げかけているわけです。
本来 野球というのは、うまい人だけのもんじゃないし、みんなが楽しみながら成長できるスポーツだよなと言っているわけです。
普通の野球漫画では サッカー部のエースが野球部に入ったり 柔道部の人がキャッチャーやったりで ご都合で強い人が集まるわけなんだけれど、この作品はそんなに甘くないです。
野球部ない
部員もいない
野球経験者もいない
グラウンドもない
部費もない
コーチもいない
ゼロからのスタート。それでも主人公は頑張って部を作るのです。
なんのために活動をするのか、それは野球が好きだから。
まるで日本にキリスト教を教えに来たザビエルを観ている感じになります。
しかしこの熱と信念が自然に周りに伝わって、仲間がどんどんと集っていくのが面白い。
リーダーというのは 誰よりも熱くないといけないのだなと感心してしまいます。このアニメは野球シーンはサブです、豪速球とかスラッガーも出てきません。
そんなものより個人の成長とか心の揺れ動きにグッとフォーカスをあてている ここがすごい。
作品と関係ない話をして申し訳ないけれど、このアニメを見ていて思ったのは、明らかに低予算な事だった。少ない人数で頑張って描いているのが画面から伝わってくるほど。
きっと低予算でも一生懸命アニメをつくろうという気持ちでやっているに違いない。この熱を是非感じ取ってもらいたい。
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