ユニクロの会長がウィグル自治区の綿花を使用しているか使用していないかでノーコメントだと答えて話題になっている。
私も靴下をユニクロで買っているので、強制労働の人が育てた綿花の靴下履いてたら 申し訳ないなと思っていろいろ調べてみた。 結論から言うと この問題は難しくて良くわからない。
メイドインチャイナの服はほぼ産地ウィグルの綿
新彊ウィグル自治区で生産されている綿花は「新彊綿しんきょうめん」と呼ばれている。
中国で生産される綿花のうち、87%が産地ウィグルの綿。だからメイドインチャイナと書かれている衣服の大半が産地ウィグルの綿ということになる。
ちなみに ウィグル自治区だけで北海道の21倍の面積がある。
関連 https://www.wwdjapan.com/articles/1198795
なんでウイグル地区で綿花栽培が盛んなのかというと、気候にある。日照時間は長く雨が少ない。気候も乾燥しているため綿花の栽培に適している。
1日あたりの日照時間が6割から8割。綿花栽培にうってつけの土地と言える。1ヘクタールあたりの綿の生産量は2062 kg 。
2020年は250万ヘクタールで栽培されている。1ヘクタールは100メートルかけ100メートル。
このうち 130万ヘクタールは 衛星システムや無人ドローン、収穫マシンを使って綿花をガバーッと収穫している。規模が違いすぎる。
ウィグル地区でも世界の大規模農家と同様に、ドローンを使って土地を計測し、綿花を収穫するまでの機械化と効率化を進めている。
機械化すると 農家1人で半日あたり13.3ヘクタール分の綿花を収穫できるらしい。
ウイグル地区は700万人がこの綿花関連の仕事に関わっているとされている。トヨタの社員数の20倍くらいいる。
中共を擁護する訳じゃないが、ウイグル地区で綿花を栽培しているのは 大部分が普通の農家らしい。
で、今回 なんで産地ウィグルの綿が問題になったのかというと 産地ウィグルの綿の中に強制労働で、不当に生産されたものが入っているんじゃないかと疑わているからだったりする。
新疆ウイグル自治区に暮らす大勢のイスラム教徒(主にウイグル人)が、中国共産党の“再教育”キャンプで強制収容・強制労働させられた結果の製品なのかもしれない、という懸念が国際的に広がっている
https://diamond.jp/articles/-/250688?page=2
強制収容されたウイグル人が 綿花を栽培し、収穫し、中国で生産する。その関連の商品を販売してしまうと、企業は人権侵害を認めていることになるとみなされかねない。
そんなわけで、スウェーデンの多国籍企業H&Mは、非難を受けて、昨年ウィグルからの綿花の購入をやめるとしている。
でもウィグルで働いている他の農家の人には 飛び火に近い。収容疑惑がかけられているのは中国共産党であって地元の農家はどうしようもない。
H&Mは強制労働の綿花を使うリスクをゼロにすることでブランドイメージを守ったんだけれども、大変だと思う。中国の綿花の約9割が産地ウィグルなので H&Mが中国国内でアパレル製品を作ろうとすると 他の地区の綿花を持ってこざるを得ない。
H&Mは価格競争力を失って 結果中国での営業は厳しくなるだろう。 一方 ユニクロの製品にはH&Mのような 潔癖さは無い。
ただ、ユニクロが産地ウィグルの綿を使っていたとしても、それが強制労働で収穫、生産されたものであるかどうかはユニクロ(実際には現地の下請け会社)にも分からないんじゃないかと思う。
だって 強制労働は無いとひた隠しにしているのに 産地や生産者を取引相手に正直に言うとは 思えない。
もし仮に ユニクロの会長が勢い余って 産地ウィグルの綿全部使いませんと言った場合は、H&Mと同じように中国国内での営業活動は難しくなる。
そうなれば生産や流通にも影響するし、国内産業にも影響する。ユニクロを飛び越えて 中国で働く日本人もとばっちりで被害を受ける可能性がある。だから 会長の一言で使いませんとは言えないだろう。
で 、ユニクロに限らず、メイドインチャイナの綿関連製品の大半には 産地ウィグルの綿が使われていて そのなかのどれに強制労働ウィグル人が関わった綿や製品が含まれているのかは 消費者には 分からない。
そのうち この製品はどこの農家の人が育てた綿を使っていますという証明が付く時代が来るのかも知れない。
なんだか H&Mが気の毒に思えてきたので これから靴下はH&Mで買うかと思ったら近くに店舗がないっていう。