なぜロシアはウクライナとの戦争に負けるのか?

米国シンクタンク ウッドロウウィルソンセンター所属、近世史専門のガリーナ・スタロヴォイトヴァ氏が興味深いツイートをしている

なぜロシアはウクライナとの戦争に負けるのか?

1.ロシア軍を過大評価した
2.ウクライナ軍を過小評価した
3.ロシア側の戦略、予定路線から外れた。

有能な指揮官の罷免

ロシアでは 2007年から2012年にかけて 真面目なセルジューコフ国防相が活躍。軍の戦闘力を大幅に向上させました。

セルジューコフは軍事費が不正に水増しされているのを発見して摘発。コネ採用で仕事しない幹部1/3を解雇。なぜか将校が2.5人に1人もいたので これを15人に1人に改めました。

また使わないゴミ兵器を納入して無駄金を取っていく軍需メーカーとも喧嘩して、軍事品の質と量を改善させました。

資金が効率的に使われるようになり ロシア軍は強くなったものの、セルジューコフは大量の敵を作ったため、2012年にスキャンダル問題で追放され地位を失いました。

狡猾なショイグ

代わりにやってきたのが狡猾なショイグ。ショイグは、セルジューコフが任命した人物を全員解任し、軍事品のサプライヤーと仲良くすることにしました。価格や品質について配給業者と揉めることをやめたのです。

ショイグの特殊能力は「とにかく敵を作らない」です。利益団体の機嫌を損ねないようにしながら、兵士の給料も上げ みんなに好かれるイメージを作りだす事に長けています。あちこちで顔を立てるのがうまいおじさんですが、八方美人なことで難問が登場します。

陸軍に回すカネがない


さて、海軍と陸軍はどちらとも強くすることは出来ません。どちらとも強くすると 中途半端になって負けてしまうからです。

陸軍を強くしたいなら海軍を諦める必要がある。ロシアにそれができるでしょうか?NO。

ロシアは貧乏国家にも関わらず プライドだけは高く領土拡大を狙っているので、ソ連時代に作った戦艦ですら捨てることが出来ずに使い続けています。

艦隊が大きくなるほど維持するためにはコストがかかります。そのため陸上部隊の予算を削る必要があります。プーチンは古くなった戦艦に不満を示し、2027年までに新造船の割合を70%にすることを宣言しています。当然 陸軍の予算は削られます。

電撃戦用にしては戦車が足りない

今回の戦争でもロシアの地上侵攻部隊は小規模になっています。SDGSに配慮したのかもしれませんね。

電撃戦ってなによ?
今回のロシアの侵攻作戦は電撃戦と呼ばれるもので、知らない人に簡単に説明すると、普通は 第1部隊が全速力で前進してウクライナの指揮を攻撃。

ウクライナの指揮通信が混乱している時に 第2部隊、第3部隊がなだれ込んで追撃。

通信が途絶えて分断されたウクライナの守備隊を制圧したら 領土を占領し、後方からの供給ラインを守るというのが 定石です。

↓これくらいは必要。

ところが 今回のロシアは一番前の第1部隊しかいませんでした。

なぜか?

どうやら ロシアはウクライナ兵なら簡単に蹴散らせる、もしくは無抵抗で降伏すると思っていたようです。(まじかよ)

プーチンは なんでウクライナ兵を見くびったか。

2014年 ロシア兵がウクライナ東部に攻め込んだときには、ウクライナ兵士は実戦経験の少ない志願兵が中心で、装備も車両も25年前のソ連時代のポンコツ兵器でした。

このへんのウクライナ軍の装備のショボさがよく分かる映画でウクライナクライシスという名作がAMAZONにあるので 知りたい人は見ましょう。

ウクライナ危機で凄惨を極めた戦場の真実/映画『ウクライナ・クライシス』予告編

ちなみに ウクライナ守備隊が倉庫からあわてて 持ち出したロケット弾、砲弾、手榴弾は99%機能不全だったため使い物になりませんでした。

そんなわけでウクライナ東部のデバルツェボやイロヴァイスクで惨敗しました。

プーチン「ウクライナ弱いんじゃね?」

この時プーチンが「ウクライナだったら いつでも潰せる」と思ったのも無理はありません。ロシアがキエフまで一気に攻め込んでいたら ウクライナを支配できたかもしれません。

しかし中途半端にウクライナを痛めつけ、屈辱を与えた事は 今回の失敗につながりました。

存続の危機に立たされたウクライナは ロシアは再び攻め込んでくるとして 装備の近代化を進めました。

ちょうど ペリーが幕府を脅して去った後で、日本で明治維新が起こったのと似ています。ウクライナでも政治が変わり、軍備を整えていったわけです。

まず、ウクライナでは6回の徴兵制が行われました。男性は徴兵され、一定期間 紛争地帯のドンバスに送られて警備につきます、このドンバスに警備に当たる部隊は約6万人。これがローテーションで代わります。

現在 ウクライナには40万人以上 ドンバスで警備を経験した退役軍人がいるわけです。このうちの多くが戦闘に参加しています。

一方 ウクライナに投入されているロシア兵は19万人。 このうちシリアでの戦争を経験した兵士は2、3千人で、実際は戦争未経験者が多い。

ロシア兵は強いと見られていますが、現在のロシア兵の入隊の主な動機は、従軍することで住宅を手に入れることで、生活の見通しが立たない、恵まれない背景を持つ若者たちが中心となっています。

ウクライナで戦士したロシア兵の家族に支払われる金額は11,000ルーブル。(時価1万円) ウクライナ側の士気は高いものの、中産階級以上のロシア国民は、現地に行って戦う熱意は無いでしょう。

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