もののけ姫の考察 Q&Aシリーズ前編 ジコ坊はどんな性格か? ほか

なるべく参考文献を参考にしながら ジブリの名作『もののけ姫』の疑問に対する解釈をあれこれ考えていくページです。前後編。「もののけ姫はこうして生まれた(以下:もの生)」「折り返し点(:折)」「風の帰る場所(:風帰)」の内容を参考にしながら書いています。

後編

アシタカは呪いが治ったのに  なぜ自分の故郷に帰らなかったの?

ジブリ内でも同じ質問が監督にあったそうですが、サンを乗っけて村に帰ったら 元婚約者的な立場のカヤがいるということで、結局つらくなるので帰らないそうです。(風帰-p168)

最初にマゲを切るシーンがありますが、あれは もうこの村の住人ではなくなるという永久的な決別の儀式なので、呪いが切れたからといって帰れないそうな。(もの生-p354)今後はアシタカはタタラ場で暮らしつつ、サンの面目も立てるという板挟みの暮らし方になるようです。

難問:アシタカが カヤからもらった首飾りをサンにあげているのはなぜ?

謎。言及してる文献が無かったので推論ですが、カヤは「お守りするように息を吹き込んだ」と言ってたので アシタカはみんなに効く”お守り”だと信じているのでしょう。

「元婚約者のお守りを 別の女の子にやるのか」と たしかに微妙な気持ちになりますが 他にあげるものがないのでしょうがないです。

アシタカはサンを守りたいのだけれど 自分はタタラ場に行って 人間たちが森に攻め込んでくるのを止めたい。サンは以前「死など怖れるものか」と危ないことを言っていたので、何もしないと 突撃して死にそう。

というワケで自分が戻ってくるまで死なないで欲しいという意味合いで送ったのかと。

サンのほっぺたの模様はペイントですか?

入れ墨だそうです。

もののけ姫の舞台って何年前くらいの日本をイメージしてるの?

室町時代。幕府の力が衰えているので 侍が好き放題暴れまわっており、室町時代末期に伝来した石火矢が現れています。

また戦国時代になると槍が発達してくるのですが、もののけ姫の舞台では田舎侍が薙刀(なぎなた)をメインで使っているのもポイントです。

ジコ坊は組織の為に働くサラリーマン的役割

(胸毛はこんなに濃くない…)

この世で一番たくさんいる人間。いい人で、質問すると親切に答えてくれるし、組織の中ではちゃんと働く。

組織の命令が下りると善悪は考えずに命令に従う。損得で動いているので悩むことはない、これは命令だからやらなきゃいけないという姿勢。それでも際どい仕事はなるべくエボシにやらせようとする。じゃあ悪人かと言うと悪人とは言い切れない

物語の役割としては石火矢衆という現場の組頭。師匠連に命令されて任務を遂行する人。坊主じゃないけれど普通の人ではない、ちょうど山伏のような存在。怪しげで何やってるか分からない人。(折-p37を要約)

ジコ坊の初期設定はどんなんだったの?

「非人の頭らしい。全国の情報を集め裏側の商売に徹している。エボシのもたらした石火矢を配下に仕込んでたたら経営に加担した。ここでいう非人は中世では神人=神の直属人や 供御人=天皇の直属民と呼ばれた人を指している。本来 聖なる仕事を遂行する人たち。」(生-p315)

「要するに傭兵の口入れ屋のようなものだが、本心はシシガミの首にある。エボシが独自の石火矢隊を組織したことに危機感がある。乙事主が勢力を結集したことを好機として森がタタラを攻撃している間に天皇の書状と情報網で集めたジバシリ、悪党どもと自分の配下を組織して一挙にシシ神を殺そうと図る。」(生-p95)

ジコ坊の地位は 現代で言う 中間管理職かもしれません。タタラ場の長であるエボシと直接交渉ができる程度には 偉いけれども、シシ神の森に踏み込む危険な仕事はさせられているので、恐らく天朝様まで もう一人以上挟んでいるんじゃないかなという感じです。


シシ神の森の奥深くまで 踏み込める書籍
「折り返し点」

折り返し点―1997~2008

もののけ姫は奥深い作品なので、宮崎監督のメッセージみたいなものが、イマイチ分かりにくかったりします。その為のガイド本として自分が読んで一番面白かったのは 「折り返し点」でした。

もののけ姫、千と千尋、ハウル、ポニョまでの12年間の作品作りについて 宮崎監督の企画書、エッセイ、インタビュー、対談などが収録されています。

「僕は別にエコロジーを訴えたいのではないんだよ」と ぶっちゃけトークが炸裂したり、制作の時の裏話をたくさん知ることが出来ます。500ページ以上ありますが、読み始めると、楽しくてそのまま読みふける程の一冊です。

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