うっとうしい 蚊をやっつけるには どっちの製品がいいの?
ウチでは20年位前から、ずっとリキッド式の蚊取り線香を使っていました。60日イッポンポンのあれです。 毎年 山瀬まみがカッパの格好して踊ってたような気がします。
別段 このリキッド式でも困ったことは無かったのですが、ホームセンターに替えのボトルを買いに行ったら 最近ではワンプッシュタイプや電池で動かすタイプが主流だそうです。持ち運びが出来て便利だとのこと(お店のおじさん談)
しかしワンプッシュと電池式、それぞれの特徴がよく分からないので いろいろ買って調べてみることにしました。
電池式やワンプッシュ式に使われている薬剤は同じ
電池式タイプもワンプッシュタイプも 薬剤にはトランスフルトリンかメトフルトリンという比較的新しい殺虫成分を使っています、これはどちらも部屋の温度で気化します。昔のように温めたり、燃やさなくてもいい時代になったわけです。
電池式 | 内蔵ファンを回して薬剤を蒸発させる方式。 (参考:家庭用殺虫概論) | |
ワンプッシュ式 | プシュッとした粒子が空気中に広がって床や壁に付着、その後 薬剤が蒸発して殺虫する方式。 プッシュ後に薬剤の濃度は徐々に落ちていきますが、 12時間から24時間 バリアを張ります |
それで、トランスフルトリンとメトフルトリン どちらが効くの?
結論から言ってしまうと、虫によって違うらしいです。
◯蚊以外にも効くやつが欲しい→トランスフルトリン
◯蚊によく効くやつが欲しい→メトフルトリン
トランスフルトリンはアカイエカ、イエバエ、チャバネゴキブリ等に対して
優れた殺虫力を持っています。どのくらいの分量で虫が死ぬのかというと
LD50値(投与した動物の半数が死亡する用量)
アカイエカ 0.0036-0.00938μg/匹
イエバエ 0.018-0.0764μg/匹
チャバネゴキブリ0.64-1.48μg/匹
「日本衛生動物学会 殺虫剤研究班のしおり」より
感覚的によく分かりませんが、1回プシュッとするだけで おおよそ0.20mlの薬剤が出ます、(重さ0.3mgくらい)ワンプッシュでアカイエカが31000匹くらい死ぬ分量が出ます。
150匹の蚊を瞬殺するトランスフルトリン
こちらの動画ではトランスフルトリンを使った製品で実験されてます、狭い空間ですが蚊の大群があっという間に死にます。
金鳥の「蚊がいなくなるスプレー」は現在5タイプ出ていますが、トランスフルトリンが使われているのは この200日無香料のタイプのみです。
トランスフルトリンは 家で飼ってるペットには対しての影響はあるの?
WHOが作成したトランスフルトリンの文書を読んでみると、魚類やミジンコ等に対しては毒性が強い、しかしネズミ、鳥、ミミズ、藻等に対しては毒性は低いとあります。例外はあるかもしれませんが、ネコやイヌなどの哺乳類は 尿で排出されるからまず大丈夫です。
☓ 魚にはキビしい
トランスフルトリンはエタノール等の有機溶媒に溶けやすく水にほとんど溶けません。ただ、空気に混じって、水中に行けるようなので、魚には良くありません。
レビュワーさんの中には ワンプッシュ式のトランスフルトリン製品をプシュとしたら別の部屋で飼っていた昆虫が全滅したというお話もあったので 夏休みの宿題で昆虫を飼われている場合は要注意です。
虫かごは家の外に持っていかないと早死にしてしまいます。
蚊に対しては メトフルトリンがトランスフルトリンの3倍効く。
でもハエには効きにくいです。
ドイツのバイエル社が1985年に開発したのがトランスフルトリンで、少し遅れて住友化学工業が開発したのがメトフルトリンです。
メトフルトリンのLD50値(投与した動物の半数が死亡する量)は住友化学の農業化学品研究所調べによると
アカイエカ 0.0015µg/雌
イエバエ 0.24μg/匹
チャバネゴキブリ1.3μg/匹となっています
比較するとこんな感じ
トランスフルトリン(µg) | メトフルトリン’(µg) | |
アカイエカ | 0.0036-0.00938 | 0.0015 |
イエバエ | 0.018-0.0764 | 0.24 |
チャバネゴキブリ | 0.64-1.48 | 1.3 |
まとめると メトフルトリンのほうがアカイエカに対して大体2~6倍くらい効く ことになります。
メトフルを使った”どこでもベープ未来”に「3倍効く!」と書いてあったのもウソではなさそうです。
ただしハエにはトランスフルトリンの方が3~13倍くらい効くので 、牛舎が近くにあってワイルドなハエがよく飛んでくる場所ではトランスフルトリンの方がいいです。 ハエ取り線香に練り込まれているのもトランスフルトリンです。
メトフルトリンってちゃんとヤブカ(シマシマの蚊)にも効く?
効きます。レビューを読んでいると、対象の虫にはヤブカに効くとは書いてないから効かないんじゃないかと心配になってしまいますが、 実験では ヤブカの一種 ヒトスジシマカの成虫にも効いているので ヤブカも死にます。
ヤブカはアカイエカの約3倍の分量で死ぬようです、さすがにタフな昆虫です。
ヤブカがプィィンと入ってきた時にプシュッとするだけで それはもう苦しがって猛烈な勢いで室内を飛び回って どこかに消えるので 1度お試しあれ。
☓ここだけは注意。
トランスフルトリンも メトフルトリンも魚には毒。
この段落は 少しマニアックなので読み飛ばしてもOKです。どっちも魚には毒性が強いというのが要点です。
やや難しい話 それぞれの毒性
トランスフルトリン コイ TLm48 16ppb
ナゾの暗号のようですが、TLmとは薬剤を希釈した水中で、実験動物の半数が死亡する薬剤濃度です。この場合 1リットル中にトランスフルトリンが0.016mg混じった水中では48時間経つと鯉の半分が死んでしまいます。
いまいち分量がピンときませんが、200日スプレーの場合トランスフルトリンが41.7ml含まれているそうですから、ワンプッシュで0.20mlくらい飛ぶ計算になります。至近距離で何回もプッシュすると危なそうです。
それではメトフルトリンはどうかというと コイのLC50値は3.06μg/L(96hr.)
1リットル中にメトフルトリンが0.00306mg混じった水中で96時間コイを飼育すると半分が死んでしまうそうです。時間は異なるけれど こちらはトランスフルトリンよりも少ない量で死ぬので、メトフルトリンもかなり魚に対して厳しいです。
こちらを使った製品も1日1回プシュっと押すだけのタイプは 魚への影響が大きいので「観賞魚などの水槽のある部屋では使用しないこと」と書いてあります。
(参考:蚊がいなくなるスプレー24時間用)
まとめ
とにかく蚊をやっつけたい場合はメトフルトリンを。蚊だけでなくハエ等もついでにやっつけたい場合はトランスフルトリンが良いです。
夜寝ている時に蚊が耳元を プゥゥゥーンと飛んできたときは速攻で「この蚊 殺すッ」と思いますが、そんな時はスプレータイプのほうが 空気中の薬剤の濃度を状況に応じて上げられるので有利だと思います。持ち運びが楽という長所もあります。
一方の どこでもベープ未来などの電池式は 窓のスキマから入ってくる蚊に対して 室内に一定濃度のバリアを張るという感じで使っています。リキッド式と同じような使い方になります。
「1時間当たりの価格が安いのはワンプッシュ式」
1時間当たりの価格が安いのはワンプッシュ式でした。寝る時に部屋でプッシュするだけで 朝まで蚊に刺されないのでオススメです。
私の家はたまに小さいハエが入ってくるので トランスフルトリン派です。
室内で使う場合は最新テクノロジー製品のほうが安いし便利です。しかしレジャーやキャンプなど、屋外で使うときには 煙が拡散するので 渦巻き型の燃やす製品が 便利です。
有効成分 | 製品の形式 | 会社名 | 製品名 | 画像 | 効果時間 | 使用日数 | 総使用時間 | 実勢価格 | 一時間当たりの価格 |
トランスフルトリン | ワンプッシュ式 | フマキラ | おすだけベープ ワンプッシュ式 虫除け セット 280回分 無香料 | 24h | 280日 | 3360h | 860 | 0.13円/h | |
メトフルトリン | ワンプッシュ式 | 金鳥 | 蚊がいなくなるスプレー 蚊取り 24時間持続 365日分 | 24h | 365日 | 8760h | 1,864 | 0.2円/h | |
メトフルトリン | ワンプッシュ式 | 金鳥 | 蚊がいなくなるスプレー 蚊取り 24時間持続 255日分 | 24h | 255日 | 6120h | 1,084 | 0.2円/h | |
トランスフルトリン | ワンプッシュ式 | 金鳥 | 蚊がいなくなるスプレー 蚊取り 12時間持続 200日分 無香料 | 12h | 200日 | 2400h | 785 | 0.32円/h | |
トランスフルトリン | ワンプッシュ式 | アース製 | おすだけノーマット プロプレミアム | 24h | 120日 | 2880h | 1071 | 0.37円/h | |
トランスフルトリン | ワンプッシュ式 | 金鳥 | 蚊がいなくなるスプレー 蚊取り 12時間持続 130日分 無香料 | 12h | 130日 | 1560h | 763 | 0.48円/h | |
メトフルトリン | 電池式 | フマキラ | どこでもベープ 蚊取り器 120日セット シルバー 本体+取替 | 8h/1日 | 120日 | 960h | 899 | 0.9円/h | |
d-T80-アレスリン | 線香式 | アース製薬 | アース製薬 アース渦巻香 ジャンボ 50巻缶入 | 11.5h/1巻 | 50日 | 575h | 647 | 1.1円/h | |
メトフルトリン | 電池式 | フマキラ | どこでもベープ 虫よけ器 未来150日セット 本体+取替 | 8h/1日 | 150日 | 1200h | 790 | 0.65円/h | |
メトフルトリン | リキッド式 | 金鳥 | 水性キンチョウリキッド コード式 蚊取り器 60日 セット | 8h/1日 | 60日 | 480h | 802 | 1.7円/h | |
メトフルトリン | 電池式 | フマキラ | どこでもベープGO!未来 携帯虫よけ 480時間(60日)セット | 8h/1日 | 60日 | 480h | 945 | 1.9円/h | |
メトフルトリン | リキッド式 | フマキラ | ベープリキッド 蚊取り器 液体式 60日セット | 8h/1日 | 60日 | 480h | 901 | 1.9円/h | |
除虫菊末(ピレトリン0.56%) | 線香式 | 紀陽除虫菊 | 紀陽除虫菊 天然 蚊とり線香 夕顔 50巻 | 7h/1巻 | 50日 | 350h | 1380 | 3.94円/h | |
アレスリン | 線香式 | 金鳥 | 金鳥の渦巻 蚊取り線香 30巻 缶 | 7h/1巻 | 30日 | 210h | 759 | 3.6円/h |
実勢価格は2019/5/5現在のものです
濃さに違いはあるの?
どれも大きな差はありません。メーカーが勝手に濃い殺虫剤を作って 人がパタッと倒れたらダメなので、厚生労働省が殺虫剤の指針を出しています。そのため国の基準以下で殺虫剤が作られています。
おすだけノーマット プロプレミアム は”5倍”とか書いてあるので 「なんかすごく効きそう」と思ったりしましたが、有効成分が2g、120回で割ると16mgと濃度的には普通の製品とほぼ変わりません。5倍の勢いで噴射するということなので 部屋のすみまで サッと広がりやすいという所が面白い製品です。でも散布される分量が同じなので効き目もほぼ同じです。
それぞれ日数を変えたり 香りを変えたり 夕顔みたいに成分にこだわって低刺激を貫いたりで、メーカーごとに特色を出そうとしている姿が目に浮かんで胸が熱くなります。