【薬屋のひとりごと】里樹妃へのいじめみたいな実例は実際にあったの?

薬屋のひとりごと第38話 「踊る幽霊」はかなり変わった話で、元侍女頭(ジジョガシラ)が 四夫人の一人 里樹妃に「鏡を下賜しちゃいなよ」と公然カツアゲをするという「えぇ こんな事は 唐の時代にあったんか….」と衝撃を受けた話でした。
 
で、いろいろ見ていくとまず無いっす。あんなモンが居たとしても 途中で弾かれるという事が分かりました。

そもそも 侍女頭になるのも大変。侍女頭の選ばれ方。
宦官:侍女頭になれそうな 候補者に監視役がつく、忠誠心や行動をチェックして上に報告する。

尚宮局:侍女頭の選考をする。最終的に壬氏様みたいな 局のトップが候補者を選ぶ。 
上級妃:選んだ候補者を妃が嫌がったらボツになるので相談に行く。許可が降りたら 皇帝に推薦する。

という段階を踏むので あんなのは侍女頭はおろか 侍女ですら怪しい。

オーディションが厳しいし、不正なんか発生しなくね?
はい、そもそもポンコツが入り込む余地は少ないはず、なんだけど、そこはほら 中国4000年なんで不正はあります。


実際 唐代の 侍女頭ってどんな不正をやってた?

窃盗:楊貴妃の侍女頭が 金銀の装飾品をこっそり持ち出して、自分の実家に送った。他の侍女が密告して発覚。
処分:本人は むち打ち50回、財産没収の上 後宮を追放、家族は財産の没収、官職を剥奪されたという。
 
反目:妃に仕える侍女頭が、妃の命令(宴会の準備)を無視して、別の妃にゴマすり。妃を公然と批判して「あの妃は大したことねえ」みたいな態度見せた。後宮の噂ネットワークで尚宮局に伝わって調査。妃本人がブチ切れて、皇帝に直訴した。処分 公開処罰:追放前に他の女官の前で鞭打ち、後宮からクビ、故郷に強制送還した(『新唐書』)
 

怠慢四夫人に仕える侍女頭が、妃の食事や衣装の準備をサボった。妃の部屋が汚いとか、食事が冷たいと 妃が尚宮局に訴えて、調査が入った。
侍女頭は「忙しかった」と言い訳したけど、ただの怠慢だとバレた。処分 降格:侍女頭から最下層の女官に格下げ。 給料没収+罰金。黙っていた女官も格下げ、公開鞭打ち20回『唐会要』

どんなのが処罰の対象になってたの?

  • 不敬:妃や皇帝への無礼(例:命令無視、軽視)。
  • 不正:妃の財物盗んだり、機密漏らしたり。私物化とか、魔鏡の下賜催促も即アウト。
  • 怠慢風呂を熱湯にしたり、壁のカビを放置したり 他の侍女の不正を見逃したり。統率力ない奴は「失格」ってことで処罰。

里樹妃へのいじめみたいなものは99%ファンタジー

里樹妃は14歳、帝からの寵愛がなく、親族の後ろ盾なし、気弱で孤立していることで、訴えが尚宮局や壬氏様に届かず、元侍女頭が「どうせバレない」と高を括った事で増長したのだろうと見れなくもないけれども…リアルだと99%無い。
 
侍女同士が不正を知っててチクらないのは、不正を「隠した」ってことで主君への裏切り行為。不正を黙認するのは、規律をぶっ壊す大罪にあたる(『新唐書』) 侍女が報告しなかった場合も公開でむち打ち、侍女同士に互いに監視、密告させて規律を保っていたので 元侍女頭の行動は まぁフィクションです。
 
特に 金とヒスイで作った髪飾りは「皇室の威厳」を示すためのアイテムだから、これを侍女がつけて集団で黙認してたら全員処刑レベルっす。
 
総合して考えると この設定は マオマオを活躍させるための舞台装置で、 あとは無力な里樹妃をアピールすることで これから上級妃として 大きく育てるための前フリだと考えるほうが自然なような気がします。
 
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